Ray Dalio

230905 衰退するアメリカと隆盛を迎える中国

Declining Trust, Deep Polarization and the Risk of Internal Conflict (yicaiglobal.com)

ダリオは主張する。

米国では

真実性、信頼性と規則順守の減退が進行し、

民主主義の根幹が揺らいでいる。

(市民性はまだ発展を続けているものの)

ダリオの本、

「 Principles for Dealing with the Changing World Order」では

国家成功及び失敗の理由となる、

大国の盛衰の原因となる100年間のサイクル群を解説している。

これらのサイクル群は

5つの力によって動かされている。

財務/経済、内部平和/闘争、外部平和/闘争、自然、人間の創造性だ。

ダリオの記事は

最新の米国事情を内部平和/闘争のサイクルの一部として描いている。

「人々の他人とのかかわりあいが、

 彼らの得られる結果を左右する最初の要因となる」

内部サイクルである『秩序/無秩序』の進展を解説しながらレイは主張する。

彼は読者に問いかける。

アメリカの政治システム、メディア、裁判所の公平性を。

彼自身はかなり悲観的である。

アメリカの信頼は地に落ちているとのデータを引用して。

ある投票によると、

40~50%のアメリカ人が強く、あるいは適度に

政治的な意思決定システムが公正に機能していないと信じている。

他にも、

モンマス大学の調査によると

42%のアメリカ人しか政治が『健全』であると信じてはいない。

ギャラップによると

47%のアメリカ人しか司法システムを大部分信じていない。

これらの結果は50年来の信頼低下をあらわしている。

しかし、

アメリカ人はメディアに対しては政治よりも信頼を置いていない。

ギャロップによると

34%のアメリカ人しかメディアを信頼してはいない。

この信頼度は

1970年代半ばと比べると70%もの下落を表している。

ダリオの本では

国内の秩序ー無秩序サイクルを6つのステージで描いている。

彼は米国は現在、

ステージ5に差し掛かっていると思っている。

この時期は財政状況が悪化し、

激しい内部対立の可能性があり、市民戦争や革命の危険が増す。

実際、

彼は米国での市民戦争の可能性を5割以上と見込んでいる。

『恐ろしく混沌とした闘争』の時期をさけるためには、

アメリカ人は

これまですり減ってきた社会の枠組みの重要性に気付く必要がある

とダリオは言う。

アメリカ人はまた

高い行動規範を必要とし、その必要性を「声高らかに」主張しなければならない。

最後に、ダリオは提案する。

アメリカ人は

たとえそれが偏っていたり、公正でないと感じていても、

法体系の決定に従うべきである。

ダリオの意見は殺伐としたものだ。

彼の指摘した問題がアメリカ独特のものだとして、

Edelman Trust Instituteの結果を見てみよう。

Covidの移動制限と公衆衛生上の制限にもかかわらず、

中国の信頼度は2013年に比べて

2023年が上回っている。

Edelman Trust Index 
90 
80 
70 
60 
50 
40 
30 
30 
Edelman, Yicai 
China. 
UAE 
Indonesia • 
India 
Malavsia 
• Mexic 
. The Netherlands 
Brazil Canada 
..•S• Italy 
reland 
• Australia' Germany 
Spain. 
Argentin 
Japan 
40 
orea 
50 
60 
ingapore 
80 
70 
2013 
90

下のグラフの分野においても、

各業種で中国が米国の信頼度を上回っている。

Trust in Domestic Institutions 2023 Survey (%) 
90 
80 
70 
60 
50 
40 
30 
20 
10 
Edelman, Yicai 
Business 
NGOs 
China 
Government 
Media 
US 
• • • • • 27-Country Average

下のグラフでは

中国人が国内機関だけでなく

国際機関、中でも米国と欧州の機関に信頼を置いていることが分かる。

WHOへの信頼も、中国の83%はインドの85%に次ぐ高い値である。

対照的に、

米国の世界機関への信頼はかなり低い。

Trust in Multilateral Institutions 2023 Survey (%) 
80 
70 
40 
30 
10 
World Health Organization 
Edelman, Yicai 
United Nations 
China — US 
European Union 
27-Country Average

中国人の信頼度がなぜこんなに高いのか、説明することは難しい。

その理由の1つは、

長い中国の歴史の中で儒教が信仰されてきたことが考えられる。

しかし

中国と同じく儒教を深く信仰してきた

韓国と日本で信頼度が低いことからこの可能性は考えにくくなる。

中国人の信頼度の源泉は

おそらく中国経済の成長にあるだろう。

GDP成長率は穏やかになったとはいえ、

その成長率はいまだに世界でもっともはやい。

そして中国の人々は彼らの将来見通しについて比較的楽観的だ。

2023年のバロメーターとして

Edelmanは経済的楽観主義が崩壊したとレポートしている。

5年後の自分と家族の生活が

現在よりもよくなっていると考える人々は

50%から40%へと下落している。

実際、

経済への楽観は28か国中24位と記録上最低になっている。

新興国はほとんどが楽観的である。

彼らとその家族が5年後に今より豊かになっていると考える人々は

36%を上回っている。

中国は経済の楽観が5番目に高い国なのだが、

65%の回答者が今よりも5年後の方が

豊かになっていると考えており、

2022年に比べても1%上回っている。

中国は楽観さが増加した唯一の国である。

90 
80 
70 
60 
50 
40 
30 
20 
10 
My family and I will be better off in 5 years: 
% Agreeing 
Countries in red reached all-time lows 
in current survey. 
z 
Edelman, Yicai

以下のグラフは、

各国の人々の二極化具合を尋ねた結果である。

「とても」、「極端に」二極化していると

回答した人を百分率で表している。

米国は3番目に二極化した国として位置づけられる一方で、

中国は2番目に貧富の差を感じていない国になっている。

何が二極化の原因となっているのだろうか??

Edelmanによると、

それは6つの要素に分けられると言う。

①政府への不信感

②社会アイデンティティの総室

③システムの不公平性

④経済への悲観

⑤社会不安

⑥メディアへの不信

Edelmanは言う。

パンデミックはメディアの不信を増大させ、デマを拡大させた。

現状の民主主義では

40%以下の人々しかメディアを正直で公正だとは思っていない。

世界的には

ほぼ3分の2の人々が礼節や互いの尊重を書いている。

現在は

貧富の差が拡大し、

是が非でも戦おうとする過激主義者が大半を占める

ダリオの言う『秩序/無秩序サイクル』のステージ5に該当している。

このように

真実への共通認識が欠如し、相互の信頼が揺らぎ、

法体系の公平性が毀損する事態は、国の脆弱性を露呈する。

人々は悲惨な事態に直面すると、社会不安に陥る傾向がある。

Edelmanのデータでは

米国の事態も悪化しているとはいえ、

深刻な事態に陥っているというほどではない。

一方で

インドネシアや中国のような「貧富の差が小さい」国々では

不安定な情勢にあっても、

ある種の柔軟性を備えている。